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「日中介護交流プラットフォーム・オンラインセミナーVol.6」開催レポート

7月15日の19:00〜22:00、「(日本初のオンライン)日中介護ビジネス交流プラットフォーム」オンラインセミナーVol.6」を開催いたしました。

 

今回のテーマは、「食べる力は生きる力 〜日本&中国の高齢者の“食”を考える〜」ということで、両国の高齢者の「食」にスポットを当てました。

日本と中国の介護施設において、高齢者の「食」についての考え方や対応方法などが異なるところが多いです。

日本はカロリーや塩分などがきちんと計算されていることに対して、中国は、入居者が食べられる時に、満足いくまで美味しい食事を提供するスタイルです。一方、入居者に嚥下障害が生じたら、食べる「質」が一気に低下する傾向があるのに対して、日本は、「最期まで口から食べるという人間の尊厳を守る」ことを重視します。

「食べる」という行為を切り口にして、日中の高齢者の「食」のコンセプトやスタイルの相異を踏まえ、介護の理念と課題、そして文化や生活習慣などの交流を通じて、お互いに補うものを見出す機会を作りたい、今回のセミナーの目的です。

今回も日本と中国の参加者合わせて合計約120名の方々が熱心にセミナーに参加されました。日中のそれぞれの取り組みを聞きながら、スライドに映し出された彩り豊かな料理の写真はとても食欲をそそられました。

 

セミナーは、下記のように進みました。

冒頭は悠翔会の理事長佐々木先生による基調講演でした。

 

「日本の在宅の高齢者の4割以上も低栄養リスクがある。骨折も肺炎も、その背景要因は共通している」、「日本の在宅高齢者の平均BMIは 18.1であり、6割の在宅の高齢者がやせている」と指摘。

「中国で見学した施設の食事と比べたら、日本はいかに“計算と管理されている食事”となっているかはわかる」、そして、「何を食べるかよりは誰と食べるかのほうが重要である。“孤食”はだめで、“共食”を強くお勧めしたい」と締めくくられました。

 

続けて、中国で名高い介護サービスグループ「紅日」の董事長陳琦さんより、「紅日」の食事を紹介してくれました。

陳琦さんはかつてレストランを経営したことがありました。本人も美食家というのも影響されて、経営トップの彼女は、食べることには妥協しないです。「食べられることは幸せなことです」、「お年寄りはできる食事の回数が一食ずつ減っていくと思ったら、とことん美味しいものを食べてもらいたい」と力強く話された。

そのため、16年間、仕入れ時間は必ず当日の午前1時~午前7時にこだわっていて、雨の日も風の日も関係なく、新鮮な食材に対して心がけ、そして、旬の食材をふんだんに使うことと手作りに徹底していると、陳琦さんの心をこもった、熱く語る姿勢がパソコンやスマホのスクリーンを超えてヒシヒシと伝わってきました。こういった経営者の「食」に対しての熱い心が、入居者に“口福”を与え、幸せを感じるのです。まさに、「口福」=幸福ではないでしょうか。

その後、北京に本部をおき、全国で介護サービス事業を展開する「長友養老服務グループ」の食事センターの責任者張丹さんより講演していただきました。

「長友養老グループ」の食事の特徴は、朝食と昼食は何通りのセットもあり、選択肢の多いことです。入居者の好みに合わせて、毎日、違う組み合わせの食事を作ることは決して容易ではないです。それぐらい、食事のことを大事にし、介護サービスの一環として捉えていることがすごく伝わってきました。また、「長友」は、中国の食の伝統文化を伝承し、伝統の祝日にかならず食事で表現して、入居者さんに楽しんでもらうようにしています。例えば、農歴の「端午の節句」の日には、みんな一緒でちまきを作ったり、冬至には、水餃子を作ったりしています。張丹さんの話しを聞いて、文化を感じることができました。

最後に、(株)ツクイ サービス管理部の根本文子さんにより、 「ツクイの食事の取り組み」    をお話しいただきました。

ツクイは介護事業をはじめてから35年以上経ちます。高齢者の健康を念頭におきながら、「最期まで口から食べてもらう」ため、さまざまな工夫と取り組みを続けてこられました。咀嚼や嚥下能力に合わせて柔軟に対応すること。「刻み食」ではなくて、ソフト食を心掛けています。噛む機能が衰えた高齢者でも、食べやすく、「形のある」、「見てきれい」、「食べて安心、楽しい」という食事を提供されています。

そして、「調理も自立支援」、入居者さんが一緒に作って、会話をはずむ、美味しく食べることも重視されています。

セミナーはこのような進行で着々と進み、最後の質疑応答の時間でも日中双方の参加者が活発な議論となりました。こういった議論は、双方がお互いに相手のことを初めて知って驚き、もっと知りたいという心情の表れではないでしょうか。まさに国境を超越したという感じです。

セミナーが終わってからも、日中の参加者から続々と感想を主催者に送ってこられました。その一部を抜粋して紹介します。

中国の健康管理関連企業の邱勤さん:span>an>
「はじめてセミナーに参加しましたが、あまりに新鮮な理念や新しい観点が多くて、興奮してしまいました。たくさんのことを考えさせられました。日本の尊厳のある食事スタイルと中国の豊富な美食をどう一致させるのが今後の課題だと思います。引き続き、このような交流に参加したい気持ちです」とコメントされました。

かつて日本で留学し日本の介護施設にも勤務経験があり、現在青島の介護施設にお勤めの暁雪さん:
「日本は、嚥下機能障害のある高齢者にさまざまな工夫と対応をしているところは、我々が見習わなければならないと実感しています」

一方、日本側は、今回のゲストである悠翔会の佐々木先生は、次のように述べました。
「日本は高齢化率で中国に先行し、2000年から介護保険制度の整備・介護サービスの拡充にまい進してきました。しかし、提供されるケアと、利用者が求めるケアに徐々に解離が目立ち始めています。特に食事については、日本では「医学的に正しい食事」が優先され、高齢者の希望や楽しみが二の次になってきました。しかし、これが実は高齢者のQOLのみならず生命予後も悪化させることが近年明らかになりつつあります。日本は「食の国」中国から学ぶべきことはたくさんあると思います。」

そして、福岡の病院にお勤めの坂田節子様は、
「昨日も有意義なセミナーに参加出来てよかったです。紅日の方の力強い言葉に、熱心に日々取り組まれている姿がうかがえるようです。中国の方の実行力は素晴らしいですね。どこの国でも手探りだと思うのですが、物事を進めていく過程、プロセスが大事だと思うのです。いろんなスタイルがあっていいのでしょう。红日で働きたいと思ったほど、人柄に惚れました。現場で働く人は大変なこともあるとそれと同時にきっと現場の人も楽しく仕事が出来るだろうなと思いました」。

「高齢者にとって最適の食事とは何か?」

「生きるために食べるのかそれとも逆なのか?」

「むやみに食事を管理・制限するよりも、食べられるうちに好きなものを食べさせた方が

本当は幸せではないのか?」など。

これからも、皆さんと以上のような問題を考えていきたいと思います。また、微力ながら日中の介護分野での交流を続けてまいりたいと存じます。そして、皆様のご参加、お待ちしております。

この場をお借りして、ゲストの皆さん、通訳の方々、参加された皆さん、本当にありがとうございました!


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