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「中国の介護市場、ポストコロナ」セミナーの開催レポート

 

10月13日、久しぶりに「日中介護ビジネス交流プラットフォームオンラインセミナー」を開催しました。今回は、㈱高齢者住宅新聞社と共催することとなり、そして、湖山医療グループのご協力で当グループのスタジオを利用させていただきました。スタジオがとても本格的で、驚きました。

今回は、これまでのzoom会議と違って、初めてzoomウェビナーを利用しました。いろいろと不慣れなところが多かったのですが、幸い高齢者住宅新聞社の北田さんが熟知されていて、その上、司会もやってくださったので、私にとってこれまでになく楽でした。

「日中介護ビジネス交流プラットフォーム」を設立してから2年半の間に、マクロ的に中国の介護市場を紹介したのが、2年前の最初のセミナーでした。この2年間、中国社会が大きく変動しました。「ゼロコロナ」政策が実施されている中で、中国の最大の経済都市である上海は2カ月にもわたりロックダウンとなったり、介護施設が度々封鎖されたり、訪問介護がストップされたりしたなど、介護業界に大きな打撃を与えました。「経営が苦しい」と多くの介護事業の経営者が悲鳴を上げています。

一方で、中国の少子高齢化が進むスピードは緩むことなく、高齢者が増えていると同時に、新生児の数が年々減っています。また、コロナが経済にも悪影響を及ぼしています。

このような状況下で、これからの中国の介護市場の行方はどうなるのか。今回のセミナーがまさにたくさんの示唆を示してくれました。

 

中国の高齢者問題の専門家である殷 志剛(いん しごう)さんにより、「中国の介護市場の現状及びポストコロナ市場の行方」というテーマで、さまざまな角度から解説していただきました。数点のポイントをまとめて紹介します。

・上海を例に、政府が在宅介護を継続的に支援し、「地域に密着型」の介護サービスが推進されていて、高齢者が住み慣れた環境でさまざまなサービスを受けることができるようになっています(少しは日本の「地域包括ケアシステム」に近づいてきている印象です)。

・福祉器具の賃貸事業が開始された。「リハビリ福祉器具相談員」は職業技能等級として認定されるようになりました。

・スマート介護製品の開発と介護現場での利用が、デジタル大国ならではの優位性が示されています。効率が上がり、人手不足の解消につながります。政府が先頭に「高齢者スマート技術運用能力向上プロジェクト」を展開し、高齢者「デジタル難民」の解消を支援しています。

・(一般的に日本では知られていないが)、中国は現在49の地域で「介護保険制度」が試験されています。地域によって給付範囲や給付額がバラバラですが、上海のように確実に軌道に乗って運営され、高齢者が恩恵を受けている地域があります。

・コロナの2年間で、在宅訪問サービスがコロナの感染拡大した度に停止された。介護施設は「封鎖管理」を余儀なくされて、新規入居や家族の見舞いが禁止されたことで、入居率が低迷しています。

・課題が山積している中で、長期的に見れば、介護市場の将来は明るいと言えます。これは高齢者人口が増えつつある中で、介護へのニーズが多くなるし、多様化を求められているからです。一人っ子の親が高齢者になっている割合が多くなり、家族よる介護が不可能となることも今後の大きな流れとなるでしょう。

・日本の「尊厳のある老後、尊厳のある最期」、「認知症になっても人生が終わらない」などの理念が中国で大きく共感され、日中の交流が大きな意義があります。

上海に本社がある訪問介護事業者「福寿康グループ」の 董事長張軍さんは、「中国の在宅介護最大手の事業戦略~在宅高齢者を支えた総合介護サービス〜」を題に、自社の例を用いて、中国の在宅介護の現状と運営状況を紹介してくれました。

注目したいのが、張軍さんは、かって8年間に渡り日本に留学し「介護」を学びました。その後帰国し「福寿康」を創業しました。現在、中国国内50都市以上、400の事業所、10万人のユーザー、1万人の従業員を抱える在宅介護最大手まで急成長を遂げました。わずか10年ちょっとで、この目を見張る成長には何があったのでしょうか。

・国が「在宅介護」を推進する政策の波に乗れた業務内容。介護保険の利用で業務の拡大が実現できました。

・新しいサービスの開発や利用者の個別なニーズに応じることで、顧客を獲得し利益に繋ぎました。

・デジタル戦略を取り入れることで、病院と連携し遠隔診断やスマート投薬などのサービスが実現できました。また、介護スタッフ、利用者、会社管理側の三者の情報の相互連結と共有ができ、介護スタッフの配置や人事管理、勤務態度などもデジタル化されることにより効率が一段上がることができました。

・近年、投資会社からは相次いでの投資で会社の急成長に後押しされました。まさに良い循環に入っている状況です。

・日本式のサービスを取り入れることで、他社との差別化ができました。とりわけ、最近業務量が急増となっている「訪問入浴」は、日本の会社と連携し、完全に日本のノウハウで行ったところ、大きく話題となりました。

そして、湖山医療グループの代表である湖山様が「中国は日本ほど社会保障が整備されていない分、いろいろな束縛をされることなく、イノベーションに挑むことができます。いつか、日本を追い越すのではないでしょうか。我々はやはりもっと視野を広げて、大胆にいろいろな新しいことを挑戦しないといけない」と述べられました。

質問応答の時間では、中国の介護人材の不足や教育問題、福祉機器の利用状況、介護施設内のニオイ問題などが取り上げられました。セミナーの時間が予定より30分延長となり、丸3時間の開催となりました。驚いたのが、参加者全員が最後まで参加されたことでした——。

セミナーは久しぶりの開催でしたが、とても充実したものとなりました。

ここで、改めて、高齢者住宅新聞社、湖山医療グループの多大なご協力を心より感謝申し上げます。そして、参加された皆様、ありがとうございました!

 

 

「高齢者住宅新聞」の11月9日号で本セミナーの報告記事が掲載されました。

20221109_8面(日中交流セミナーの報道記事)

 


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