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「上海市医療福祉専門家・民間事業者来日講演会」を開催しました

トヨタ財団国際助成事業「日中認知症ケア交流プログラム」の一環。先週、上海市政府関係者をはじめ、大学の福祉・医療専門学者、介護事業経営者などの構成で、8名が来日しました。

一連の認知症ケア関連施設を見学した後、28日(金)に「上海市医療福祉専門家・民間事業者来日講演会」を参議院議員会館で開催しました。

講演会進行】

 「中国高齢化社会の現状と展望」 鐘仁耀 (華東師範大学公共管理学院長、教授)

 「上海市養老サービスのこれまでの歩みと認知症ケア」 殷志剛(上海市老齢科学研究センター主任)

 「上海市社区における訪問診療(ホームドクター)について」 孫煒(上海交通大学国家健康産業研究員)

 「職員の離職ゼロ目指す施設運営&認知症ケアの試み」 陳琦(上海紅日養老グループ董事長)

以上の4名により、高齢者人口率が最も高い上海市の介護政策・市場動向・地域医療・認知症ケアの取り組みなど  を参加された日本に皆さんに発信しました。昨年末の統計で65歳以上の人口が1.4億に達した高齢社会の深刻さは言うまでもなく、一人っ子政策の影響で進む高齢少子化や、4・2・1の家族構成の常態化など、それらは日常生活と経済にどのような影響をもたらしているのか。政策、サービスの整備が急務となっている今日。

発信した内容のポイントとして、

上海市高齢化の推移と現状

・上海版介護保険制度が構築、より多くのサービスを提供、そのサービスとは

・地域に密着する介護サービスの強化内容及び政策

・上海スタイル「地域包括ケアシステム」の構築

・医療と介護の連携を推進するための仕組みづくり、ホームドクターを例に

・シルバー産業のブランド育成

・中国伝統の漢方医学を用いた認知症ケアへの取り組み

・介護施設内の認知症ケアが始まった現場の実例の紹介

・何をすれば離職率を下げスタッフの心をつかめるのか

 etc.

日本ではあまり知られていない上海のコミュニティにおけるホームドクターの仕組みと役割に関しては様々な取り組みが紹介されました。例えば、医療保険がありながら、受診する病院や患者の年齢により自己負担額が異なります。小さな病気は地域にある比較的小さい医療機関で受診することを奨励するような形で、患者が殺到する大病院の混雑を緩和する目的でもあります。地域医療の医療従事者を確保するために補充金制度があります。こうした内容は日本の関係者の関心を得た様子です。

中国でもっとも成功している民間介護事業者「紅日養老グループ」董事長陳琦さんの「低離職率の秘訣と認知症ケアへの挑戦」のお話は出席者の注目を集めました。介護現場のスタッフの多くは農村からの出稼ぎ労働者という現実に、どう帰属感や仕事に対しての矜持を与えるのか、その取り組みは本当にユニークで、ここまでやるのか!と驚くばかり、だから平均20%の離職率の中でわずか1〜2%の低離職率が実現できたのでしょう。また、現在日本の認知症ケアを取り入れて実践中で、これまでは入居者が個別の部屋でお食事を摂っていたのに、今は、ダイニングスペースを作って、スタッフも入居者と一緒にお食事するようになり、来月はそこでご飯も炊くと・・・、着々と進んでいます。ここでも、中国のスピードを感じた次第です。

   

   

今回、上海一行は、講演会以外に、日本の先進的な認知症ケアの施設を見学したり、関係者らと意見交換したりして、幅広く認知症ケアについて触れることができました。見学した施設でVR認知症体験し、ある特養では「看取り」と「口腔ケア」などの勉強、とても感銘を受けたとの感想。お年寄りのため、本当に何をすべきなのか、単なる衣食だけ不自由だけへのケアでいいのか、考えさせられたことが多かったと口を揃えていました。中国の「死」に対してのタブーな文化からは、施設内で「看取り」ができるのはまだ遠いと言われていますが、今回来日した民間事業者はやる気満々で、誰かが始めないといつまで経っても始まらないと言いました。

講演会の会場では、活発な質疑応答が行われました。その後、参加者からメールなどで、「大変示唆が多い講演会で、参加してよかった」、「普通では得られない情報が盛り沢山、参考になりました」などの声を続々といただきました。

日本が経験したことを中国へ伝え、また中国が日本の素晴らしい介護を評価し取り入れることによって、日本にとってもいい刺激になりよりもっと良くする・・・このような相互触発による上向きな循環がW‘in-Win関係に繋がると確信しています。

(講演会後の懇親会の様子、大いに盛り上がりました)

     

以上


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